What is【療法食】?
- 療法食が何かよくわからない・十分な説明を受けれなかった
- 療法食は無理してあげなきゃいけないの?
- 価格は一般の総合栄養食に比べてどのくらい高いの?
- 療法食の成分がなにか、ざっくりと知りたい
現役の獣医師である私は日々の診察で、療法食が必要な子のオーナー様からこんな声を幾度となく耳にしてきました。
今回はそんな悩みにお答えします。
この記事を読めば以下のことがはっきりと理解できるかと思います!
- 療法食の定義と与える理由
- 療法食の主な成分は?表で解説!
- どこで入手できる?
「犬の療法食」をご存じですか?
療法食とは、症状をともなっている食欲のある動物に対して、獣医師が症状をおさえるためにお勧めするご飯のことです。
治りづらい、繰り返し発生してしまう、こういった慢性的なかゆみなどの皮膚病や下痢などの消化器病に遭遇したときは、療法食が非常に多く使用されております。
完全栄養食として製品化されて幅広い年齢や嗜好性(味の好き嫌い)に対応していますので短期間でも長期間でも安心して使用できます。
多くの犬たちが病気になったとき。意外にも、突然与えられる療法食をきちんと食べるため、私たちのもつ「味の薄いまずいごはん」というイメージとは少し違うのかもしれません。
「療法食」のメリット・デメリット
療法食のメリットとして、
体質改善
薬による苦痛、副作用を全体的に減らす
通院回数を減らす
療法食のデメリットとして、
価格が高め
動物病院でしか手に入らないものがある
別の疾患にかかるリスクをあげてしまう
療法食は治療に用いられる飲み薬や注射と違い、栄養を厳密にコントロールすることで体質を変化させることができます。
お薬に代わり苦痛、副作用を減らし、通院回数を減らすこともできます。
ロイヤルカナン社のようにオーダーメイドフードを行っている会社では複合的な病気があっても最適なフードを与えることができます。
一方、デメリットとして、一般食より価格が高めです。およそ2キロあたり5000円ほどであり、市販のものは2000円台から売られているので、高いと感じるのも無理はありません。
動物病院でしか手に入らないものもあります。獣医師の処方に従わないで使った場合、別の疾患にかかるリスクをあげてしまう、という点も注意です。
つまり、日常的に使用する際にはコストや入手の難しさから敬遠されることもあります。
療法食ごとで何がどう違うの?
疾患別
疾患カテゴリー | 特色 |
---|---|
消化器|下痢・便秘・嘔吐・悪臭の便・便の量や回数多い | 脂肪を抑え、食物繊維を高める+プレ・プロバイオティクス |
皮膚|炎症▶かゆみ・乾燥・フケ・べたつき・刺激に過敏 | 皮膚の代謝に必須のビタミン+ω3脂肪酸で炎症抑制 |
アレルギー|消化器・皮膚の症状▶食事のタンパク質が原因 | 摂取したことないタンパク質に限定+加水分解たんぱくで強化 |
肥満・関節|歩行異常▶関節炎・椎間板ヘルニア・脱臼・骨折など | 関節液や軟骨の主成分を配合+ω3脂肪酸で炎症抑制 |
尿路|膀胱炎▶結石症・尿路感染・ストレス性▶頻尿・血尿 | 結石を構成するミネラルの調整+排尿を促し膀胱を清浄化 |
腎臓|慢性腎臓病▶高リン血症・尿毒症▶食欲不振・嘔吐 | リンの制限で腎臓病の進行予防+高消化性タンパク質で尿毒症抑制 |
心臓|心不全▶疲れやすい・高血圧など全身的な異常 | タウリンなど心筋タンパク質を向上+ナトリウム制限で高血圧予防 |
年齢別
形状
2か月齢で歯が不十分ならソフト・ムース状やミルクのような液体メインとする。
成犬は徐々にカリカリの固形(ドライ)メインに。
消化不良を起こしたらなるべく内臓や胃腸に優しい柔らかい形状に。
成犬で元気なうちは、キブルという特殊な形状をもつフードで歯石対策もできる
成分
体格が育ちきるまでの成長期対象に、骨や筋肉に必要な高消化性タンパク質、カルシウム、リンを豊富に
中高齢にみられる関節炎や肝臓、消化管機能低下に合わせてカロリーを10%ほど減らし、高消化性蛋白質を豊富にして、心筋・骨格筋の維持にはげむ。
抗炎症作用をもつEPA・DHA
腸内環境と免疫力の向上効果を持つ乳酸菌や食物繊維は全年齢対象として豊富に摂る
全年齢対象、消化に悪い粗悪な脂肪や便の量(未消化物)が明らかに多くなるフードには注意。
ターゲット別
「腸内環境」
プレバイオティクス=体にいい働きをする腸内の善玉菌の栄養源(エサ)
代表例)オリゴ糖、食物繊維
プロバイオティクス=善玉菌のような乳酸菌のような生きた菌
代表例)乳酸菌
腸内細菌が乱れると、腸の粘膜が弱り、必須脂肪酸やビタミンを含む栄養の吸収不全となり、免疫力の低下を引き起こす。
粘膜がはがれて潰瘍化し、難治性となり、血行性に腸内細菌の感染を引き起こすこともある。
「抗酸化作用」「抗炎症作用」
オメガ(ω)3系不飽和脂肪(EPA・DHA)とオメガ6系不飽和脂肪酸を調整
→ ω3脂肪酸は魚油、ルリジサ油(ボラージ油)に多く含まれおり、EPAやDHAなどが有名である。ω6脂肪酸とともに必須脂肪酸であり、抗炎症作用や抗がん作用があると研究にて明らかにされている。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssmn/53/6/53_293/_pdf/-char/ja
ビタミン
「歯石・口臭予防」
キブル
→ かむと歯垢が除去できる特殊な形状のこと。
ポリリン酸ナトリウム
→ この物質が歯をコーティングして歯石形成を予防できる。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio1968/31/3/31_3_948/_pdf
その他の成分に関してはこちらの記事をご参照ください。
我慢してでも食べるべき療法食がある!
今は昔のような雑種犬がほとんどいなくなり、トイプードル、チワワなど純血種が非常に多くなりました。それもここ20年くらいでかなり変わったと感じます。
純血種には体質がある程度共通しており、特定の疾患の発生しやすさにもかかわっています。
犬種ごとの多い病気については別の記事をご参照ください。
こうした背景から、犬種などに関連する、体質が元となっている病気がたくさんあります。
体質は戻せないので療法食でうまく付き合っていくのがベスト。
雄犬で厄介な病気の代表例である膀胱結石。これはどの犬種にも起こりうることから予測がしにくい病気です。
1ミリほどの結石でも複数できると尿道を詰まらせてしまいます。
一方、この結石は食事で溶かすことができるものが多いです。このため療法食は必須。
好き嫌いが多くて療法食を与えるのに苦戦することがあります。さらに療法食のみを与えなければ治療の意味がない。と
いうくらい厳密に使用する必要があるものです。
ぜひ子犬のころから好き嫌いがない子に育ててあげてください。